つぶらな瞳を輝かせて小さなかわいい手を結びながら、母を見つめる赤ん坊の姿はなんともいえない愛らしさを感じます。そこには、疑いも無く不安も無い、信頼しきった無心の姿を見るからでしょう。
私達は相対関係の中で生きています。家庭でも、親子、夫婦、兄弟というように社会の人間関係を見ても老若男女、労使などと相対の中でお互い生活しています。しかし、相対しているものが対立したままで生活することは不幸であります。それぞれの立場を異にしても、その立場を認めながら調和しなければ、本当の平和な社会はありません。二者が合一することは、無限の可能性と発展性がみられます。
合掌とは、物事を思う胸の真ん中に掌と掌を合わせることでありますが、その心は相対する左の掌と右の掌が一つにとけあう形を通して、疑いや不信を超えて信じ合い、調和した世界の出現となるのであります。左手の仏さま、右手の自分がとけあい、仏さまに抱かれながら無心の姿となります。
毎日のように流れる平和とは程遠いニュースが示すように、現代人の心は乾ききっています。大なり小なり争い事の耐えない社会に潤いある生活を呼び戻すには、共生(ともいき)、まさに合掌の心ではないでしょうか。
(谷口 明信)