差別の怖さ

2020/09

 人種差別をしてはいけません。誰もが分かっていることで世界の常識のはずですが、流れるニュースは耳を疑いたくなる事ばかりです。人間が人間を差別していじめるということほど、いけないことはありません。仏教は徹底して人間平等を教えています。

 

 差別はしていないと思いながら、私たちはまったく気付かないうちに、人間や職業などを差別してしまう場合がしばしばあります。あるお通夜での一場面ですが、葬儀屋さんが施主様をこのように紹介されてました。 

 

「施主様であります○○様は優秀な成績で大学を出られて一流会社に就職致しました。故人はその○○様を女の細腕一本でビルの便所掃除までして育て上げました。云々……。」

 

私を含めて多くの方々は、「立派な母親だったんですね。」と感銘を受けました。しかしお通夜も終わり帰ろうとしたとき耳に入った参列者の方の言葉にハッととしました。 

 

「私はビルの便所掃除をふくむ清掃業務にしたがっているが、あのときの"便所掃除までして"というのはどういう意味だよ。私は立派な仕事だと思っているよ。」 

 

その方は、怒っている訳ではありませんでしたが、どこか寂しげでした。葬儀屋さんや、それを聞いていた私は、○○さんの立派さを強調するのに、清掃という仕事を何かいやしいものと差別する職業差別に知らず知らずに陥っていたのです。

 

 人間は平等であります。職業に上や下、尊い仕事、卑しい仕事の差別はないことを、よくよく心しなければならないと痛感した日でありました。 


合掌

(谷口 明信)