令和2年秋彼岸
長い梅雨が明けた途端に酷暑が襲い、台風が上陸した夏が過ぎて、ようやく秋を迎えようとしています。
暑さを乗り越えて訪れた涼しい風は、私たちの心をなごませると共に、ご先祖さまの面影を運んできてくれます。お彼岸のお中日でもある秋分の日は「祖先を敬い 亡くなった人々を偲ぶ」ことが法律でも公布されています。真西に沈む太陽を仰ぎながら極楽浄土に想いを馳せることが出来る日々は、私たちが居るこの世界・現世である「此(し)岸(がん)」から、苦しみのない仏さまの世界・悟りの境地である「彼岸(ひがん)」に到る時でもあります。
お彼岸はお中日を挟んだ七日間に、六波羅蜜(ろくはらみつ)の教えが宿っています。布施(見返りを求めず施しをする)・持戒(規則正しく生活する)・忍辱(耐え忍ぶ)・精進(怠けない)・禅定(常に落ち着く)・智慧(真理を見極める)を実践して行く期間であります。
現代は、人と人とのつながりが稀薄な時代と言われています。生きとし生けるものが縁を結び、思いやりを持ってお互いに助け合いながら歩んで行く。これこそが共生と言われる生き方です。少しのことでも許さない不寛容な社会は、報復を呼びます。懐の深いつながりは、恩返しを受けるでしょう。六波羅蜜の実践は、苦しみを乗り越えたところに慈悲の心が芽生えていることを教えてくれます。
私たちが育まれた原風景をいつもでも胸に刻み、拠りどころとして信じる心を深く留めながら、ご先祖さまや家族とのつながりをしっかりと契り交わしながら手をたずさえて進んでいく。このことこそが、私たちのなすべき務めとなるのではないでしょうか?仏さまの教えに巡り合わせていただいたことに感謝し、共感しながら与えられた寿命を精一杯活かしていきたいものです。
南無阿弥陀仏